【新潟・アスリートブック】 貫く「自分らしさ」~バスケットボール女子・新潟アルビレックスBBラビッツ 岩村裕美さん

【新潟・アスリートブック】 貫く「自分らしさ」~バスケットボール女子・新潟アルビレックスBBラビッツ 岩村裕美さん


バスケットボール女子のWリーグは終盤戦を迎えた。新潟アルビレックスBBラビッツは18試合を消化(1月25日現在)して8位。ただ、年が明けてからは4連勝中と好調だ。その核になっているのがチーム最年長の岩村裕美。精度の高いシュートと、淡々と自分の仕事をこなす姿勢で、さりげなくチームをけん引している。

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リングにボールが収まった瞬間を見とどけた。岩村は右腕を突き上げたまま体を反転させる。そしてリスタートに備えて走り出した。そんな動作を繰り返すたびに、普段のポーカーフェースは次第に笑顔に変わっていった。

1月24、25日の新潟対日立ハイテク2連戦。新潟は連勝し、前節からの連勝を4に伸ばした。2戦目、岩村は6本の3点シュートを決めるなど、チーム最多の19得点。この試合のMVPにも選出された。

「練習してきた通りのボールの回り方で、みんながいいパスを出してくれました」。新潟は3点シュートラインの前で素早くパスを回した。相手のマークがずれたところで、岩村がフイニッシュ。意思統一されたプレーの締めくくりを担った。

今シーズンのテーマは「自分らしく」。持ち味はシュート。日立ハイテク戦までの18試合で、フィールドゴールの成功率45.5パーセントと、3点シュートの成功率37.5パーセントはいずれもチームトップ。プレータイムの608分もチーム最長。「らしさ」は数字が示す。

新潟の前身、JAL時代の2007年には日本代表に選出されてアジア選手権に出場した。2009-10年シーズンは得点ランキング1位に。国内屈指のシューターとして存在した。まずは迷わずシュートを打つ。自分の間合い、タイミング、距離。打てる瞬間が来たときはリングを狙う。培ってきたものに、今季はあえてこだわっている。

昨季就任した衛藤晃平ヘッドコーチの下、新潟のバスケットは変化した。それまでの決まったスケールの中で個々の仕事をこなすスタイルから、選手それぞれの判断でチャンスを作り出す戦い方に。

そんな中、シュートの判断も当然、自分で見極めなければならない。「打てるときに打たないこともあった」。昨季はシュートのタイミングを探っている状態だった。

今季はそれを解消した。「打てるときには必ず打つように」。本来の感覚を形にすることを軸に据えた。

11月の開幕から14試合、新潟は1勝しかできなかった。「無理矢理打っていた感じ」と、自身も呼吸が合った流れで打ったシュートは少なかった。それでも狙い続けた。厳しい状況でも迷いはなかった。

年が明けて見つめ直した。「自分のタイミングで打とうと。無理に打つのは違うなって。ボールを持って余裕があれば、フォームが崩れない自信はある」。プレーを整理し、冷静に。今、チームの連勝に自らの調子の上向きを重ね合わせる。

確認できたこともある。日立ハイテク戦の1戦目。岩村の得点は4だった。ただ、リバウンドは7でスティールが3。新潟はこの試合で3人が2桁得点を記録。チャンスの起点になった。

2戦目、シュートを狙う相手に対し、逆サイドから走ってプレッシャーをかけた。常にスティールを狙い、簡単にボールを運ばせなかった。その上で、19得点した。

「意識してやっていました。ルーズボールやリバウンドも絶対に譲らないようにって」。得点のベースには、泥臭くボールに絡む意識がある。

数字には残らないプレーを率先してこなすことは、これまでも自然とやってきた。球際での気持ちの強さは、チーム全体の闘志を煽ることになる。シュートも、ボールへの執着心があるから生まれてくるもの。それをあらためて感じた。

役割を果たす、自分らしさを追求する。ひたむきさは試合の質のアップにつながり、チームメートの成長を促す材料になった。「彼女が入ることで、ほかの選手が生きるんです」。衛藤ヘッドコーチは存在の大きさを認める。キャプテンの星希望は言う。「裕美さんがいると安心します」。

試合前のウオーミングアップ。誰よりも早くコートに現れ、シュートタッチを確認する。それが昨季までの光景だった。今季、自分よりも早く姿を現すチームメートが増えた。それぞれが自分の感覚でアップを始めるようになった。「いつの間にかみんな出てくるようになりましたね。いいことだと思います(笑)」。背中をチームメートは見ていた。

Wリーグでプレーするのは今季が12シーズン目。33歳はチーム最年長。「ベテラン」という表現は客観的に受け止める。「年数や年齢からすれば、そう見られるでしょうから」。ただ、自身の捉え方は違う。「年齢がどうだから、とかそういうところを理由にはしたくない」。

チームのプレースタイルが変わり、それに順応しようという意欲が出てきた。そこから感じたのは、バスケットを学ぶ楽しさ。「こういう場面なら、これができるな、とか。面白いと思えるのは、成長しているからかな」。

18試合終了時で通算試合出場は326試合、通算得点はリーグ歴代7位の3867点。そんな数字の上積み以上に、大切なのは充実感。自分を表現しながら、シーズンを歩んでいく。

(斎藤慎一郎)

☆岩村裕美(いわむら・ゆみ)〇1981年6月30日生まれ。大阪府出身。大阪薫英女学院、大阪薫英女子短大を経てJALラビッツに。11年のJAL休部後、12年に新潟へ。ポジションはGF。背番号8。

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◎新潟アルビレックスBBラビッツ・今後の試合予定

2月7日 (土) 15時開始 対JX-ENEOS        宮城野体育館(宮城)

2月8日 (日) 14時開始 対JX-ENEOS        国体記念体育館(福島)

2月14日(土) 15時開始 対アイシン・エイ・ダブリュ 新潟市東総合SC

2月15日(日) 12時開始 対アイシン・エイ・ダブリュ 新潟市東総合SC

2月28日(土) 18時開始 対三菱電機         燕市吉田総合体育館

3月1日 (日) 14時開始 対三菱電機         燕市吉田総合体育館

3月7日 (土) 15時開始 対トヨタ自動車       アオーレ長岡

3月8日 (日) 12時開始 対トヨタ自動車       アオーレ長岡

3月14日(土) 18時開始 対シャンソン        新潟市体育館

3月17日(日) 14時開始 対シャンソン        新潟市体育館

※問い合わせ
新潟アルビレックス女子バスケットボールクラブ
TEL 025-225-0004