町あるきのパイオニアに聞く 日和山五合目館長・野内隆裕氏インタビュー2

町あるきのパイオニアに聞く 日和山五合目館長・野内隆裕氏インタビュー2


いま、各地で町づくり、町おこしが盛んになっています。それと同時に、地域の暮らしや未来に目が向けられる機会が、どんどん増えています。地域の魅力を発信したいと考えたとき、先駆者の話はきっとヒントになるはず。

新潟の町あるきのパイオニア、地元の魅力を長年、発信し続けてきた日和山五合目館長・野内隆裕さんのインタビューの続きです。

建物まで作るなんて・・・「やっちまいました(笑)」

14年間の活動のなかで生まれたここ、「日和山五合目」。

「日和山での滞在時間を増やしてもらいたい、良さを感じてもらいたい。町あるきや祭りなんかの、前線基地にもなれたらいいなという思いで作りました。
最初(14年前)は建物を作るなんて思いもしなかったけど・・・・ やっちまいました(笑)」

とは言いつつも、熟慮とアイデアに満ちたここ。

「日和山の何を大事にしなければいけないかを勉強しました。あくまで日和山が主役で、その魅力を補填する形でなければいけないなと。だから屋上は、日和山からの眺めの良さを損ねないように作ってます。最初は木がたくさんありましたが、枝から一本一本、どれを落とせば何が見えるか吟味しました。
ここは『山』なので、日和山登山記念のスタンプもあるんですよ。日付もちゃんと入れて」

五合目のネーミング然り、カフェの方角石最中も然り、本質を外さない範囲で「遊び」もきっちり楽しむ。大人の姿勢です。

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子どもも喜ぶ記念スタンプ。

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↑スタンプの基になった、長谷川雪旦が描いた江戸時代の日和山。1階に展示されています。あ、望遠鏡が!!

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オリジナルグッズも豊富。

このマップについても聞いてみました。

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なんと、自費・自腹が出発点

「沢村洋先生の『新潟の町 古老百話』という本があって、町名のいわれ、小路のいわれが書かれているんです。すごい本で、なじらねっとで参考資料にしていました。
そんな中、2000年に新潟市が小路のいわれの一覧表と地図を出したんです。せっかくだから、その地図を生かせるような案内板があるといいなと。自分でイラストを描いてベタっと小路に貼ってたんです」

最初は自費、自腹でやっていた活動でした。しかし、ここから広がって行きます。

「2004年に新潟市が目を付けてくれて、『これで地図を作ろう』と。官民いっしょになって、小路めぐりマップを作ることになりました。担当された皆さん、理解がある方々でした」

2008年に第1弾「新潟の町 小路めぐり」本町通り界隈編が発行。現在、第6弾まで制作されています。

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2階のギャラリーには小路めぐりマップの展示と蔵書がズラリ。

「小さいけど、自分たちがやれることをやって来ただけなんですよ。こうなったらいいなと思って看板をペタッと貼ったり、ここに来てもらいたいなと思ってイベントを開いたり。発信し続けることで、アンテナの高い人に見つけてもらったんですね。
自分の町を知って、好きになって、ここはいい場所だよって言ってると、自然と人が集まってくるんだと思います。ただ、出会う人にはとても恵まれたと思います」。

一方で、いま起きていることはひとつの「結果」に過ぎないとも。

「町づくりをしようなんて思ってなくて、例えばおいしいものを食べたら誰かに教えるような、それくらいのことしかしていないんだと思うんです。『もし、誰も手伝ってくれなかったら?』ってよく聞かれますが、変わらずに自分がやりたいことをやっていると思います」

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子どもたちへのバトンと五合目のアーカイブ

「マップはいつか出なくなるかもしれないし、案内板もいつか壊れる日が来ます。そのなかで、どんな爪痕や結果を残せるか。まず、皆さんにこの案内板やマップで喜んでもらえることがひとつ。いま、もうひとつ思っているのが、子どもたちが町を体験する機会を作ること。小学校の総合学習でここまで来てもらえるようになりました。それが将来どんな結果に結びつくか、見届けることはできないかもしれませんが、彼らにバトンを渡すことはできているなと感じています。また、マップが印刷されなくなってもここに来れば展示がある。五合目の意義として大きいと思います」

2015年度から、全国の小学5年生が理科で使う教科書(学校図書株式会社)に、この日和山と萬代橋が掲載されるとか。嬉しいニュースですね。

さて、『進化する日和山』はどこまで進むのでしょうか?

「ゴールはないですね。『日和山五合目』も経営的に成り立つかどうか分かりませんが、まあ、あまり義務感を抱かずに無理なくやれる範囲でやっていきたいと思います。ここのおかげでつながりが広がっているので、光熱費ぐらい出ればいいかなと思ってます(笑)」

ロングインタビュー、誠にありがとうございました。

(GATAポスト編集・早見正明)

日和山、エノキもいいですね。ボタニカル担当として、見逃せません。樹木マップを発行する新潟市公園水辺課に、保存樹推薦メールを送りました!

日和山五合目15ちょっと宣伝です。

弊社発行の「おでかけKomachi」で、野内さんと新潟の町を歩きました。いとうせいこうさん、柳生真吾さんといっしょに歩いた様子も収録しております。現在、県内の書店で販売中、よろしかったらこちらもどうぞ!

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※追記です

エノキの保存樹推薦に関して、新潟市公園水辺課から返信をいただきました。

保存樹等指定事業に関する「新潟市樹木の保存及び緑化の推進に関する条例」では、国や地方公共団体が所有する樹木は保存樹指定の対象としない、とのことです。日和山のエノキは市の所有のため対象外であること、また、日和山の景観を形作る大切な役割を果たしているため維持管理に努めていきたいとの旨、ご説明をいただきました。ありがとうございました。