今や類例を見ない個性派の「サンバイシ神楽」手作り中
棧俵=サンバイシとは、米俵の両端をふさぐふたのことです。カボチャ、ナス、クマビエを使って獅子頭を作る、日本唯一、オンリーワンと思われる神楽が新潟市にあります。
9月5日、江南区木津です。6日(土)・7日(日)に行われる木津祭りに向けて、神楽を手作り中です。
獅子頭の土台となるサンバイシは、稲わらで作ります。下の写真は、わらで形作るための型。分量と大きさが記されています。
円の下部がくぼんで描かれているのは、首が当たる部分。また、左上に「クワイボウ」と記されています。「クワエボウ」のことです。イがエになっているのはお国なまりです。ご愛嬌。棒を獅子頭に差して「くわえる」のです。↓このように。
石井新一さん、驚異の71歳です。くわえることで、このように舞うことができます。
ハンズフリーです。両手を自由に使えます。その代り、歯に相当な負荷がかかるので、歯ぐきともども丈夫でなければ務まりません。それとあごも。「何回も舞うと、ゴリゴリゴリゴリ(わらが当たって)、真っ赤になってね」と石井さん。あごから喉から、擦れて痛いけれど、それでも毎年、生き生きと舞を奉納します。
石井さんの前の代に舞手を務めていた金子甚一さん曰く、「夏場の蚊帳があるねっかね。あのがんを利用して、やって来た時代らがね」。今では唐草模様の装束を羽織っていますが、昔は蚊帳でやっていたとか。皆の協力を得ながら、少しずついいものに形作っていったのです。
この日は口の部分の制作までで解散。顔に表情をつける各パーツは翌日の午前中に作ります。カボチャで作る鼻、ナスの目、クマビエの髪。「生モノ」なので、祭りの当日に完成させるのです。
棧俵神楽は、地域の賀茂神社に奉納する神楽です。
――明治の頃、以前から神楽を持たなかった氏子の若者たちは、その購入嘆願のために棧俵を獅子頭として滑稽な舞を披露した。しかし、木津は昔から破堤が集中する地で、「水戸口」とも呼ばれ、水害に苦しんでいた。そんな折、大正2年(1913)に起こった豪雨で深刻な被害に遭う。ここで若者たちは、かねてからの願いだった神楽の購入の夢をきっぱりあきらめ、自分たちの手作りの神楽で舞を奉納するようになった。
というのが、始まりとされています。人々の願いや思いがこもった、祭りの原点を感じられるいい話。かつては同じように、手作りの神楽を奉納していた地域が、ほかにもたくさんあったのかもしれませんね。
(早見)
木津祭り
主な日程
●9月6日(土)
14時 神楽道切り 諏訪神社
15時 神楽道切り 賀茂神社
19時 盆踊り 木津農村公園
21時 賀茂神社みやのぼり
●9月7日(日)
8時 神明宮みやぼり
9時 神楽巡回
14時 賀茂神社みやのぼり
17時 棧俵神楽送り(小阿賀野川)
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