【BBガールズ通信】女子プロ野球界の牽引者・川保麻弥さんに迫る パート2

【BBガールズ通信】女子プロ野球界の牽引者・川保麻弥さんに迫る パート2


【第二話】

※第一話はこちら

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中学3年夏に野球部を引退し、進路を考える頃になりました。

男子の中での野球を続けるか、女子野球に進むか、高校というステージにおいての野球に対して、彼女はここで大きな決断をすることとなります。

彼女が出した結論は「女子だけで言い訳が出来ない世界での野球で、自分自身がどこまでやれるか挑戦してみたい!」というものでした。

当時の彼女の夢は、鹿児島県の神村学園高校の女子硬式野球部に入る事!全国で5チームの高校女子硬式野球部が存在する中で、名門であり群を抜いた強さを誇っていたのが神村学園でした。

「近くに埼玉栄高校があるけど、あまり強くない。だから、遠いけど、神村学園に行って、本気で全国制覇を目指したい!」

と彼女は両親に自分の素直な想いを伝えました。それに対し、お母さんは

「強い所で力を試すのもいいけど、弱い所で頑張って、強い相手を倒す方がかっこいい!それが本当の実力だと思う!」

と冷静に言ったといいます。お母さんの言葉は、彼女の胸にストレートに響きました。「確かにそう。強い相手を倒す!それが真の強さ!」と彼女自身でも思い直し、「埼玉栄高校で全国制覇!」これが彼女の最終的な夢となりました。

鹿児島での高校生活から埼玉での高校生活に思い留まった彼女。

「お母さんにしてみたら、近くにいて欲しかっただけなのかもしれませんけどね。まんまと罠にはまった感じです」と笑いながらも、彼女は自分での決断に後悔はなかったといいます。「むしろ厳しい方の道を選んだ事で、高校時代が充実したものになった気がします。」負けず嫌いで頑張り屋な彼女らしい発言だと思いました。

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彼女は、埼玉栄高校に進学し、女子野球の世界に飛び込みました。

男子の中での野球を今まで続けてきた彼女にとっては「女子野球」には新たなチャレンジとなります。ここで素敵な出会いがあります。それは、顧問の斎藤先生との出会いです。

埼玉栄高校女子硬式野球部は創部4年目でしたが、斎藤先生は女子硬式野球部を持つのが1年目。

「女子がどこまでやれるのか、僕にはわからない。だから、君達には色々やらせるから、覚悟しておいて!」

女子野球を教えるのは初めてという斎藤先生は、自分の本音を選手達にぶつけてくれました。そして、女子野球を知ろうと努力をしている斎藤先生の背中を見ることで、チーム内における信頼は、日に日に増していったと言います。

体格も筋力もまるで違う男子の高校球児達との練習試合にも普通に挑戦しました。高校生の男子と真っ向から勝負しての野球。勝てるわけはない。それでも、全員必死にくらいつき、男子との勝負から逃げることはありませんでした。

「あの頃はきつかった。2回、捻挫もしましたしね。」と川保さんは笑います。

あの時の経験は、全て自分の糧となっているといいます。「今思えば、あの頃、同じ高校球児とはいえ、よく女子が男子と練習試合をやれたなと思います。今では考えられませんからね」こんな一歩一歩が、埼玉栄高校女子硬式野球部の歴史を作ったともいえます。

彼女は、高校時代に、二つの夢を叶えることになります。

一つは、高校進学の時に決めた夢。「埼玉栄で全国制覇!」 これを2002年に叶えます。高校野球最後の夏「全国高等学校女子硬式野球選手権大会」において、強豪駒沢学園女子に打ち勝ち、埼玉栄は「初優勝」に輝きました!

彼女自身の夢でもありましたが、埼玉栄高校として、女子硬式野球部を創部以来、ずっと夢に掲げていた「全国制覇」の夢でもあります。

当時の選手、監督コーチ、保護者、OG、埼玉栄高校女子硬式野球部を作り上げてきた関係者全員が、涙を流し喜びました。そんな瞬間に立ち会えた彼女は、埼玉栄高校を選んでよかったと心から思ったといいます。

そしてもう一つの夢。

それは「女子野球世界大会日本代表チームに選ばれたい!」という事でした!JAPANのユニフォームを着て、日本を背負って野球がしたい!高校での様々な経験が大きなプラスとなり、当時彼女は「最年少選手」として、高校二年三年と2年連続で代表選手に選ばれました!普段、寡黙な斎藤先生も、この時ばかりは、夢を追いかける彼女に対し居残り練習にも付き合い、ご指導をしてくださったともいいます。

「斎藤先生は、限られた時間の中ではありましたが、沢山の事を教えてくれました。そのおかげで選ばれたと今でも思っています。」

高校時代に野球で二つの夢を叶えた彼女は「これからも野球を続けよう!女子野球を広げよう!」と決意します。野球に対する恩返しもしたいと思ったといいます。野球から夢や希望を与えてもらい、それにむかって努力する事で、自分自身を成長させてきた彼女。その時その時、真剣に精一杯。そんな彼女が、この先女子野球界のパイオニアになるのは、わかる気がします。

つづく・・・