高校野球・日本文理 快進撃を支えた裏方OB

高校野球・日本文理 快進撃を支えた裏方OB


大橋亮 メーン用リサイズ2

 

全国高校野球選手権に2年連続8回目の出場を果たした日本文理は、24日の準決勝で三重に0-5で敗れた。準優勝した2009年以来の決勝進出はならなかった。それでも、粘り強い戦いぶりは新潟県内だけでなく、全国の高校野球ファンにインパクトを与えた。

 

大活躍のチームを陰で支えていたのが、OBの大橋亮さんだ。日本文理が準決勝進出を決めた22日の夜、大橋さんの携帯は鳴りっぱなしだった。相手は大橋さんが経営する野球用具専門スポーツ店「エイティナイン」の顧客や、野球部OB、県内の野球関係者。「実は甲子園でのお金が足りなくなって。なんとか集めているところなんです」。快進撃の裏で滞在費が枯渇した。現地組からの要請を受け、野球OB会のまとめ役の大橋さんが中心になって、資金調達に走った。

 

日本文理は100人を超える大所帯。試合に出場する甲子園滞在組以外の1、2年生は、試合のない日、大会終了後の新チーム結成に備えて新潟で練習している。野球部関係者のほとんどが現地にいるため、居残りの部員の指導は大橋さんが行った。当然、甲子園での応援には行っていない。「もちろん見たいですけど、誰かがやらなければならないこと。監督やコーチには甲子園に専念してもらいたいですし、日本文理というチームはこの夏以降も続きますから」と、率先して裏方を務めた。

 

県内の高校野球部を対象にした用具、備品の販売が仕事。母校以外の野球部員と接する機会も多いだけに、普段は後輩たちには1歩引いた立場で接する。「指導陣がいるわけですし、自分からああしろ、こうしろと言ったことはないです」。そんな中で、うれしい出来事もある。

 

3回戦の富山商戦でサヨナラ2ランを放った新井充選手から、試合後にLINEのメッセージが入った。「大橋さんのおかげです。ありがとうございました」。特にアドバイスをしたわけではない。ただ、大会前に新井選手に話したことがあった。「ファーストストライクを打つようになったら、良くなってきたな」。サヨナラ打はワンボールの後のストライク。「私が何かしたつもりはないですよ。でも、結果につながったことはうれしいし、何かの役に立てていたとすればね」。

 

日本文理在学時は捕手。1年先輩で、ロッテなどで活躍した吉田篤史投手とバッテリーを組んでいた。当時は県大会で3、4回戦に進出するのが精一杯のチームだった。苦闘の時期を知っているOBだけに、大井道夫監督の信頼も厚い。「監督には今でもちょっとしたことで怒られますよ。高校時代と変わっていません」と笑う。

 

目標だった全国制覇には届かなかった。だが、全国ベスト4は胸を張れる成績だ。「力は出し切ったと思う。3年生にはよくやった、おつかれさまと言ってあげたいです」。スタンドから応援することはなかったが、気持ちは甲子園に向いていた。役目を果たしながら後輩たちを見守った夏が終わった。

(斎)