高校野球・日本文理が初戦突破! 元プロのOBがエースのピッチングを分析~元ヤクルト投手・本間忠さん

高校野球・日本文理が初戦突破! 元プロのOBがエースのピッチングを分析~元ヤクルト投手・本間忠さん


本間忠メーン リサイズ

全国高校野球選手権で、新潟県代表の日本文理は12日の1回戦、大分県代表の大分を5-2で破り、2回戦に進出した。この勝利に胸をなでおろしたのが、OBで元ヤクルト投手の本間忠さん。今年2月から外部コーチとして、エースの飯塚悟史投手ら投手陣を指導してきた。同校にとって、5年ぶりの初戦突破を喜ぶと同時に、飯塚投手の投球内容をチェックし、アドバイス。母校の快進撃を期待している。日本文理は18日の2回戦で、愛知県代表の東邦と対戦する。

 

 

大分戦の後、本間さんはすぐに飯塚投手とLINEで連絡を取り合った。「まず勝ててよかったです」という後輩の言葉に、「初戦はそれが大事だから」と返した。

 

飯塚投手は決して本調子ではなかった。5回までに6四球と生命線の制球が乱れた。そこに乗じて2点を先制された。被安打は8で、6回以外は毎回走者を背負った。苦しいピッチングだったが、本間さんは「辛抱強く投げました。結果的には悪くないです」と言う。

 

最も評価したのが、「試合中に修正したこと。飯塚も捕手の鎌倉(航)も、いつも言っていることを忘れなかった」。本間さんが日頃伝えているのは、「調子が悪いときはインコースを攻める」こと。

 

6回以降、飯塚投手は勝負どころでインコースにストレートとスライダーを投げた。序盤はアウトコースがほぼボールだった。新潟大会での決め球が、なかなかストライクと判定されなかった。「それで焦ったと思います。でも、終盤はインコース攻めをして正解。鎌倉がいいリードをした。バッテリーは冷静でした」。インコースを勝負球に使い出したことで、持ち前の球威が生きた。相手打者に窮屈なスイングをさせた。結果、投球のリズムを取り戻した。

 

飯塚投手のこの試合の最速は142 キロ。大分の佐野皓大投手は145キロ。本間さんは「投球の中身が違った」と見る。「飯塚がここ一番で投げた速球は、きっちりとコーナーに決まっていました。佐野君は真ん中に入ってきた。佐野君の球は速いけど、ストライクを取りに来たときは130キロほど。飯塚はどの球も130台半ばから140キロくらいでした。そこを土台に緩急をつけていた」。

 

ただ、修正点もある。本間さんが気にしているのは「フォームの体重移動」だ。「軸足が安定していません。投げた後、体が流れている。だから手元で切るような投げ方ができないし、球に体重も乗らない」。18日の2回戦の相手は愛知県代表の東邦。夏の甲子園出場16回目の名門に対して、この日の投球では「通用しない」と言い切る。

 

「どこが悪かったか、どうしたらいいかは、飯塚も分かっていると思います」。2回戦に向けて、練習中のフォームの映像を関係者から送ってもらい、あらためてアドバイスをするつもりでいる。

 

本間さんは99年にヤクルトの入団テストに合格し、同年のドラフト6位で指名された。2006年に引退するまで、62試合に登板して5勝3敗の成績を残した。プロ野球経験者による高校生への指導が解禁されたのは今年1月。本間さんは指導に必要な学生野球指導資格を取得した。恩師の日本文理・大井道夫監督の誘いもあり、2月から週に2回のペースで後輩たちの指導を始めた。

 

本間さん自身は甲子園出場の経験はない。「今年の3年生は昨年夏から3季連続でしょう。うらやましいですよ」と笑う。卒業後、一時は大学に進学したが中退。その後、家業の建築業手伝いながら、新潟市内のクラブチームで野球を続けた。そしてプロ入りを果たした。

 

ヤクルトを引退後は、07から09年まで独立リーグ・新潟アルビレックスBCの投手コーチを務めた。現在は自らが中心になって立ち上げた野球教室「シンプル・ベースボール・アカデミー」で約100人の小、中学生を指導している。「こうして野球に関わっていられるのは、文理で甲子園を目指して取り組んだ時期があったから」。この夏、母校への感謝を、後輩達を支えることで表現している。

(斎)