奇跡の毒毒ハーモニー。大人だって自由研究 【夏のボタニカル】
自然界の調和には、いつもビックリです。
夏です。子どもたちの自由研究に負けちゃおれません。大人だからこそ、研究を楽しんでみました。
新潟市中央区、鳥屋野潟の清五郎です。
ウマノスズクサをみつけました。葉先が丸いヤツです。毒を持っています。
こちら、ジャコウアゲハ。同じく毒を持っています。
ウマノスズクサは、毒性のあるアリストロキア酸を含むことで、自らを食べようとする虫たちを避けています。敵が来ても動いて逃げることができない植物の、すごい自衛手段。
しかし、虫サイドも負けてはいません。
毒入りと知ってなお、この草を専門に食べる虫が、ジャコウアゲハの幼虫。なかなかのつわものです。
毒を克服した上、葉っぱを食べることで自らも毒を帯び、捕食者を遠ざけているのです。
「アイツは毒だ」って分かれば、すすんで食べるヤツはいなくなるという仕組み。
おっ、ヒラヒラと飛んでいるジャコウアゲハを見つけましたよ。
何かを探している様子。メスです。
とまりました。
飛び去った後、葉っぱを裏返してみます。
卵を産み付けていたのです。
それにしても、どうやってウマノスズクサを判別しているのでしょうか。
さらに周辺を観察すると、早くも幼虫に育っている個体も。
毒入りの葉っぱをムシャムシャ食べていました。
この関係においては、食べられっぱなしのウマノスズクササイドにメリットがないですね。これから長い年月をかけて反撃の方法を編み出して行くのでしょうか。
また、チョウの中には、ジャコウアゲハの姿に似ることで毒を持っているふりをする、したたかなヤツもいるそうです。見てみたい。
人間たちがあずかり知らないところで、植物や虫たちが奏でている壮大なハーモニーの、ほんの一端です。
さて、ウマノスズクサは花もまた、なかなかの変わり者。
ヘンな形ですが、これが花。
ハエをおびき寄せて付け根のふくらみの部分にいったん閉じ込め、雄しべが花粉を出すと解放しハエに花粉を運ばせるという、かなり手の込んだ策略を実行しているのです。
ラッパ状の入り口部分はこんな表情。
「オニ!アクマ!」
というハエの悲痛な叫びが聞こえそうですが、最終的には解放するのだから、食べてしまう植物に比べれば良心的かもしれません。
(GATAポスト編集・早見正明)