【インタビュー①】地域をデザインするアート展 ブランキングアートの心は「針供養です」

【インタビュー①】地域をデザインするアート展 ブランキングアートの心は「針供養です」


地域の魅力を活かし、デザインし、発信する画期的な試みとして、GATAポストが注目する「第一回 燕三条ブランキングアート展 2014」(関連記事はこちら)。なぜか、激しく心を揺さぶられます。果たして何ゆえ揺さぶられるのか、理由を確かめるべく、同展の作品「ウォリアーズ」を制作した諏訪田製作所の小林知行社長を訪ねました。

と、その前に。同展を行っている2会場のうち、燕三条地場産業振興センターへ。こちらはアート作品展示は少な目ですが、地域の自慢の洋食器、金物などがずらり。諏訪田製作所の爪切りも。「ウォリアーズ」の“兄弟”とでも言うべきでしょうか。「ウォリアーズ」はもう一方の会場・燕三条Wingにあるので、後で寄ります。

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2会場でスタンプを押すと特製オリジナルプレートがもらえるので、ペッタンと押しました。

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まずはひとつクリア。

会場から車で20分ほど。のどかな里山の風景のなかに、諏訪田製作所はありました。SUWADA OPEN FACTORY。工場は一般の見学も受け入れています。皆さんも一度ぜひ。

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さて、ブランキングとは、プレス機で板材から製品の型を抜く作業のこと。製造の過程で出た排出材を使った作品を、燕三条で今回、ブランキングアートと名付けました。
実は諏訪田製作所では、以前から排出材で照明やオブジェなどを作り、隣接するショップなどで活用していました。同社の小林社長にうかがいました。

「“犠牲”があるからいいものができる。スクラップでオブジェや照明を作るのは、針供養みたいなものです」

「特に新しいことではなく、河原で流木を拾って何かを作るとか、古くから他でもあったことで、きっと、もっといろいろなやり方のものがあるんだと思います。それを、産業とアート展として結びつけたのが、今回の燕三条ブランド推進室での取り組みです」

――小林さんは、子どものころに排出材で遊んでいたとか?
「工場で出たスクラップをトラックが運ぶんですけど、昔は道が舗装されてなくてデコボコだったので、落ちたりするんです。それを拾って、「手裏剣」とか言って投げたり。目に当てて、変身したり」(ウルトラセブンですね)

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――以前、新潟クラフトマンクラブの会長・磯田直貴さんにお会いしたとき、昔は工場が開けっぴろげで何を作っているかがよく見えたと聞きました。(※参考記事

「昔の工場は熱かったので、開けていたんです。我々は鍛冶屋なので開けっ放しにはできないのですが、外には(排出材が)置いてありました。“手裏剣”取り放題です。」
――大人の仕事場と子どもの遊び場が隣り合っていたのですね。モノを作る“仕事”が、“生活”のシーンの中にあったように感じます。

「今は仕事と生活が分かれています。お父さんが何の仕事をしているか分からない子どもが、多いんじゃないでしょうか。昔はみんな分かってましたね」

モノを作る現場と私たちの間を作品がつないでいる、または距離を縮めている。ブランキングアート展 が心揺さぶる理由のひとつは、その辺にありそうです。それがアートだというところも、オシャレです。

――ところで、排出材という言葉には負のイメージを感じますが、それをあえて見せることに抵抗感は?

「私たちにとっては、それは単なるスクラップで、恥ずかしいなどの感情すらないものです。
何の価値もないものですが、これがスクラップだと知ると、皆さんは『もったいないですね』と言う。このもったいなさがあるから、良いものができるんです。ミディアムレアのステーキも、周りの焼いた部分の“犠牲”がないと、真ん中のおいしい部分がないわけです。
犠牲のスクラップでオブジェや照明を作ったりするのは、針供養みたいなものです。材料の供養。『あなたたちのおかげでいい品物になりました』と。そんな気持ちで作ったものです。ちょっとは浮かばれるんじゃないでしょうか(笑)」

つづきます。

(取材・記事/早見正明)