2019年ラグビーW杯の開催地に新潟県は立候補せず。1万5000人の署名を無駄にしないためには…

2019年ラグビーW杯の開催地に新潟県は立候補せず。1万5000人の署名を無駄にしないためには…


日本で開催が決まっている、2019年ラグビーW杯の開催地自治体立候補届けの提出が10月31日で締め切られた。新潟県は届け出を行わなかった。そのため、県内での開催はなくなった。県に立候補を要請してきた新潟県ラグビー協会は、今後の対応の検討に入る。

 

 

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新潟県ラグビー協会は、新潟での開催を実現しようと、約1万5000人の署名を集めて県に提出するなど尽力してきたが、行政サイドに思いは届かなかった。この後、11月5日にW杯組織委員会から立候補自治体が発表され、来年3月に正式に開催地が決定する。県協会は、新潟県のラグビー普及のために何らかの形でW杯開催を活用する方針でいる。

「日本協会からも新潟の立候補に期待する声があった。県側には働きかけていたのですが」。こう話したのは県ラグビー協会の水沢一男理事長。県協会は、日本協会がW杯招致に動き始めていた当初から、県開催に向けて準備を進めてきた。2005年にトップリーグを招いてチャリティーマッチを行い、2008年にはアジア五カ国対抗の日本対香港戦をビッグスワンで開催。その後もトップリーグ、大学の公式戦を招致し、W杯開催の署名活動も平行してきた。

当初は歩調を合わせていたかにも思えた県側だったが、腰が重くなったのは昨年11月ころから。この時期、W杯組織委員会が開催のガイドラインの配布を要望する自治体に対し、「意思表明書」の提出を求めた。ようは開催条件、概要などを記した資料が欲しいかどうかの意思表示をして欲しい、というレベルのもの。実際、新潟市は応じた。ただ、県協会が新潟での会場として考えていたビッグスワンを管理する県側の態度は「『組織委員会の方から積極的に情報を開示すべき』というものでした。その後も情報収集に努めると言ったきり」(県ラグビー関係者)。当然、ビッグスワンの使用許可も降りる見込みはない。立候補を検討する前の段階、開催条件の資料の申し込み段階で態度を硬化させた形だ。その後、状況は進展せずに、タイムリミットを迎えた。

新潟には2002年にサッカー日韓W杯をビッグスワンで開催したノウハウがある。ビッグスワンの収容人員は4万2000人。組織委員会のガイドラインにある試合会場のランクでは、日本代表の試合と準々決勝を開催できるランクになる。また、東京、大阪、静岡、岩手など立候補が予想される自治体は太平洋側が多く、新潟が唯一の日本海側の候補地と見られていた。そのため、日本協会も期待をしていた面がある。「手を挙げる段階にさえなっていれば、という思いはあります」と水沢理事長。

開催地の正式決定は来年3月。10から12カ所と見られているが、追加の候補地の募集が行われる可能性は低い。「今回は欧州や南半球の強豪国以外では初めて、そしてアジアで初めて開催されるW杯。世界の強豪の試合を間近で見られるということは、県のラグビーの普及にとっても大きな意味がありますし、経済効果も望めると予想できました」。水沢理事長はあらゆる面で大きなチャンスだったことを強調した。

ただ、W杯と関わる手段が全くなくなったわけではない。県内自治体がキャンプ地として手を挙げる可能性は残されている。実際、いくつかの自治体は2019年の日本開催が決まった段階でキャンプ地立候補の検討に入っている模様だ。サッカーの日韓大会の際、十日町市がクロアチアのキャンプ地になり、その後も交流が続くなど、効果があった。「ラグビーの強豪国がキャンプを行った場合、長期滞在する外国人観光客なども見込めます。何より、子どもたちや地域にPRする力は大きい」(水沢理事長)。

今後、県協会は署名した1万5000人に対応する形で、今後の方針を発表する予定。水沢理事長は「せっかく日本で行われるのですから。何かの形でW杯に関わりたいし、その方法はまだあります。そうすることで将来にいい効果を残せると思います」。足掛け10年に渡った招致活動が、無駄になるような形では終わらせないつもりでいる。