胎内高原ワイナリーのぶどう畑で、連続金賞受賞のワケに迫ってみた
国産ワインコンクールで2年連続金賞をはじめ数々の賞を受賞した胎内高原ワイナリー。
美味しいワインは畑から。というわけで今回は収穫目前のぶどう畑を案内していただき、
その品質向上の取り組みについてを取材してきました。
ちなみに国産ワインコンクールって?
国産原料ぶどうを使用した国産ワインの品質と認知度の向上を図るとともに、それぞれの産地のイメージと国産ワインの個性や地位 を高めるため開催しています
まずは胎内高原ワイナリーのブドウ畑の概要から
- 最大標高は約250mと高い
- 光が良く当る南南西に面した急斜面
- 畑は6ヘクタール
- 「市」直営のワイナリーは国内では珍しい
- 主な栽培品種はツヴァイゲルトレーベ、メルロー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン
- 100%地場産ブドウのみ
ちょっとその前に日本のワインの現状について
酒造メーカー大手のキリンが発表した資料によると、国内ワインの消費量は過去最高で、1998年以来の「第7次ワインブーム」といえるのではないかと。国内市場は拡大傾向でとくに低価格輸入ワインが市場を牽引していますが、国産ワインでは、日本産ブドウ100%で造る「日本ワイン」が認知度を高めています。
<参考資料>日本国内ワイン市場活況、1998年以来の「第7次ワインブーム」へ
簡単に書くと、日本で育てられたぶどうを使わず、安価な海外産のバルクワインを輸入して日本で瓶詰めしたもの、海外産濃縮還元果汁を発酵させ、日本で瓶詰めしたものを「国産ワイン」と称して売って良いことになっています(な、なんと!)。また地場産のブドウを使わずに国内の他所からブドウを仕入れて醸造しても日本ワインです。今日本にあるワイナリーはおそらく200蔵以上あると思われますが
(参考:日本のワイナリー一覧)
そのなかで「日本ワイン」の醸造蔵はぐっと数が絞られてきます。しかも100%地場産ブドウのみとするともっともっと少なくなります。
胎内高原ワイナリーの取り組みがいかにスゴイことなのかおわかりいただけたでしょうか。
胎内という土地をワインに映し出す
お話を伺ったのは栽培管理責任者 佐藤彰彦さん。
収穫前の忙しいところお時間いただきありがとうございました。
(金賞ワインを産んだツヴァイゲルトレーベの畑にて)
――これが金賞ワインを産んだ畑ですか
生食用のブドウは「棚」で作りますが、ワイン用のぶどうはこのように「ヨーロッパ式垣根」で栽培します。平成16年秋にブドウを植えたので、もうすぐ10年になります。これ(ツヴァイゲルトレーベ)なんかは1本の木に4房しかついていません。そのぶん1メートルの間隔でたくさん木を植えましょうという発想です。
1本の木から収穫されるブドウの数を少なくすることで良質な凝縮感の高いブドウになります。
――胎内高原の風土・地質の特徴を教えてください。
ブドウ畑の最大標高は約250m、日光が良く当る南南西に面した急斜面を利用し、昼夜の温度差が出るような場所です。
土壌はやせ地で粘土質。また海からふく風が畑を乾燥させます。高温多湿のこの地でもうまく行ったのは風の恩恵もあるのではないでしょうか。
やせ地というのは重要なポイントで、土に栄養があるとブドウが大きくなりすぎてしまうんですよ。粒も大きくなりますし、水分も多くなってしまいます。すると甘みも乗りづらいし色もつきづらいし(ワインが)濃厚になりづらいんです。
――胎内高原ワイナリーの栽培方式の特徴・取り組みについてお聞かせください
胎内という土地をいかにワインに映し出すか、ということで取り組んでいます。人間ができることは限られています。ブドウがよく育つように「それを手伝う作業員」に徹しています。
――テロワール(ワインに現れるブドウ畑の気候・地勢・土壌の個性)って言葉、聞きますね。
そうです。いかに土地を(ぶどうに)出すか。そう考え、今年からはすべての畑が 不耕起栽培、草生栽培、無肥料、無除草剤、無化学農薬です。葉っぱは虫に食べられますしアシナガバチにもみんなが刺されました。それでも殺虫剤を撒きません。なるべく余計なものは外から入れたくないんです。農薬を使わないことすべてがいいとは思っていないのですが、胎内の個性を引き出す、土地を活かす選択肢として選びました。
不耕起栽培
作物の収穫後,田畑を耕さずに種をまいたり苗を植えたりする栽培法。土壌侵食の防止や作業の省力化などの利点がある。草生栽培
おもに果樹園の樹下に牧草その他の密生する作物を植えること。刈草のすき込みによる地力(生産力)増進,土壌浸食の防止,地温調節,果実の早熟化等の効果がある。
――6ヘクタール全部ですか。そういえばワイン造りは「ブドウ9割」と聞いたことがあります。
(人によっては8割だったりしますが)そうですね。テロワール、いかに土地を映しだすか。胎内高原でやる意味を常に考えています。
あたかも自然がつくったようにもっていきたいと思っています。人の手が加わってないかのような。それが理想なんです。
(シャルドネの畑にて)
――シャルドネのほうが葉の茂りがいいですね。このブドウの表面に付いているのは?
ボルドー液という有機農薬で、コーティングしてブドウを守っています。浸透性のある農薬は使っていませんし、ボルドー液にしても、回数を少なくしたいと思っています。ボルドー液は有機認定農薬です。
――(食べてみて)甘い!そして味が濃くておいしいですね!
ワイン用のブドウは甘みも酸も乗っているので食べてもおいしいんですよ。うちは糖度20度を目標に作っています。今年のシャルドネはいいですね。酸もしっかりありますし。酸と甘さは相反する要素。どちらか片方が立つと片方が引っ込むんです。甘さが出て酸が弱まるとぶどう(粒)が傷んでくるし見極めるタイミングが難しいですね。
いまは収穫前で一つ一つの房を見て回っているところです。畑に入って見て回るとしぜんといろいろなデータが入ってきます。
やればやるほど自分の未熟さ、自然の大きさを感じますね。
(メルローの畑にて)
――(またブドウをいただきながら)メルローもおいしいです(もぐもぐ)。
ここは将来の特級畑。一見ひ弱で頼りないですが、小粒で色素の濃い房をつけてくれます。
たとえばこれなどは…粒が小さいんですよ。(実が)まばらについています。すると奥にも光が入って色がつくんですよ。粒が小さくてばらけて頼りないんですけど、こういうブドウのほうが良いワインになりますね。見た目は弱々しいんですよ。それがいいんですね。量より質です。
ここの区画は大事にしていきたいですね。こういう畑は作りたくてもなかなか作れないですから。
――2年連続金賞受賞についてお聞かせください
山梨でも長野でもなく『新潟』から金賞が出た(しかも2年連続で)ことは大きな意味があると思います。この土地とブドウがもたらしてくれたもの。それと日々ブドウの世話をともにやっているおじいちゃんたち(近隣の農家さんやシルバー人材からの)のおかげです。
ただワインというのは技術だけの酒ではなくて、最終的に空が決めるというか…やることやったらあとは天気を待つだけ。運も良かったのでしょうね。収穫のタイミング、この判断は良かったのだと思います。
胎内という土地をいかにワインに映し出すかという言葉が印象的でしたし、忠実に実践されているのが評価に結びついているのだなと感じました。受賞ワインの販売は9月中旬頃より順次開始とのこと。ほんとうに楽しみですね。
(GATAポスト 伊藤潤治)
胎内高原ワイナリー
農林水産課ふるさと特産係
新潟県胎内市新和町2番10号
電話番号:0254-43-6111(内線1246)