子どもたちの運動能力低下が深刻化…運動神経を鍛える「コーディネーショントレーニング」を空手道場が実践中

子どもたちの運動能力低下が深刻化…運動神経を鍛える「コーディネーショントレーニング」を空手道場が実践中


メーン リサイズ

子どもたちが体を動かす機会が減った現代、当然のように懸念されているのが運動能力の低下だ。それを補うためのスクールが、にわかに注目されている。新潟市の空手道場「夢源会」では、空手のほかに運動神経を発達させる「コーディネーショントレーニング」を取り入れている。

道着に身を包んだ子どもたちが、体をひねりながらステップを踏む。柔道のように組み合いながら、お互いの足を踏もうと争う。夢源会の稽古では、ウオーミングアップではなく、稽古の中のメニューとして、一見空手とは直接関わりのない動作が取り入れられている。

夢源会は出張教室を含め、日曜日を除く週6回、空手の稽古を行っている。武道らしく、あいさつから始まる礼儀を大切にし、基本の稽古に力を入れる。また、警備会社とともに女性向けの護身セミナーも開催している。空手を軸にして、日常生活に役立つ内容を教えている道場だ。コーディネーショントレーニングの導入もその1つ。「稽古の終盤には、コーディネーショントレーニングを行っています」。主宰する岩木秀之さんは言う。かつて、空手の世界選手権で優勝した実績を持つ、新潟県を代表する武道家だ。

本文3 リサイズ

コーディネーション能力とは、五感で察知した状況を素早く脳で判断し、筋肉に伝える能力のこと。リズム、バランス、連結、反応、変換、定位、識別の7つに細分化される。例えば、ピストルやホイッスルを聞いてすぐに動き出す「反応」、フェイントのように瞬間的に動きを変化させる「変換」、上半身、下半身の動きをスムーズにつなげる「連結」と、運動全般の能力の根源になっている。

夢源会では、空手に加えてコーディネーション能力を磨くことで、潜在的な運動能力を高めることを重視している。「運動神経の発達のほかに、勉強をするときの集中力を高めたり、体の姿勢を正すことにもなります」。もっとも、岩木さんの心の奥底には、大きな問題を解決しなければならないという危機感もある。

「子どものときに覚えた動作は、一生忘れません。ただ、覚える時期に覚えないと、生涯大変な思いをすることにもなるんです」。文科省の調べでは、子どもの運動能力全般は、1985年頃から低下が著しくなったとされている。空き地が減り、屋外に遊ぶ場がない。塾通いのほか、ゲーム、スマートフォンの普及で体を動かす機会そのものが減少した。それらの弊害は一般的にも認識されている。「私が見た範囲でも、前転や逆上がりができない子どもは多いです。それどころか、歩くときに右手と右足、左手と左足が同時に動く子どもも少なくないんです。インフラが整備されている都会の子どもだけの問題ではなくてです」。生活環境の変化は首都圏や地方に関係なく、子どもたちの能力に影響を与えている。

本文1 リサイズ

運動神経が最も鍛えられるのは9歳から12歳まで。短期間であらゆる動作を身に付けられる「ゴールデンエイジ」と呼ばれる年代だ。「この時期に体を動かさないと、運動神経の発達はほぼ止まります」。手足が一緒に動いてしまう、という歩き方の矯正も簡単ではなくなってしまう。

そのため、少しでも運動神経そのものを刺激する機会を増やそうと、岩木さんはコーディネーショントレーニングに着目した。国際的なトレーナー資格を取得。夢源会以外に、コーディネーショントレーニング専門の教室でスタッフとして指導もしている。

「私が子どものころ、遊びながら覚えていた体の動き方を、今は手取り足取り教えなければならない。そういう時代なんだと、割り切って考えるようにしています。私の目が届く範囲の子どもたちには、将来苦労をしないよう、今のうちに人間の持っている能力の根本を教えたいと思っています」。

☆コーディネーショントレーニングについての問い合わせ
総合空手「夢源会」
TEL 025-272-6105
HP http://mugennkai.web.fc2.com/